心あたたまる孤独に寄り添って

 モーツァルト晩年の作品の独特の憂欝感が好きだ。あっちへふらふら、こっちへふらふら、転調の波にたゆたい、メランコリーに身をゆだねる。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集5

モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集5

 展開部や推移句で突如として、暗い感情の深淵が露わになる。底抜けに明るい曲を矢継ぎ早に書き散らすことのなくなったモーツァルト氏が、ひっそりと温めたヒューマンなソナタたち。
 その一瞬の転調に、ふとした旋律に、人生のかなしみが押し寄せては引いてゆく。