Welt-en

 大学浪人時代に出会った幾人かの作家たちの中で、久方ぶりに、いま再び僕の心をとらえているのは、ヘッセである。
 静かに精神の幸福を願う祈りの詩にとても惹かれる。

  寝ようとして

一日のいとなみに疲れて、
私の切なる願いは
疲れた子どものように、
星月夜をしみじみと抱きしめる。

手よ、すべての仕事をやめよ、
ひたいよ、すべての考えを忘れよ、
私の五官はみな
まどろみの中に沈もうとする。

魂はのんびりと
自由な翼で浮び、
夜の魔法の世界に
深く千変万化に生きようとする。

       Beim Schlafengehen

 詩においてこそ世界は世界化されるのだ。

ヘッセ詩集 (新潮文庫)

ヘッセ詩集 (新潮文庫)