木陰でひとやすみ

 自分の専門領域をどのように確定していけばよいのかという問いは、同時に社会とどのような形で関わり合ってゆけばよいのかという極めて実存的な問題に直結する。それは極めてアクチュアルで、のっぴきならない問題なのである。


 西洋音楽史におけるアントン・ブルックナーの意義とは。ウィーン文化史における彼の立ち位置とは。あるいは、交響曲の文化史、演奏会の社会史、音楽の受容史はどのようであるか。そもそも、音楽芸術・芸術の社会的な在りようとは何か。芸術および美とは何か。
 実証的な面と文献学的な面と、どのようにあんばいしてゆくべきか。今は純-人文学的なアプローチがしっくりくる。とりあえずハイデガー『芸術作品の根源』にどっしり腰を据えて取り組みたい。西洋哲学史という森へ、いざ彷徨いゆかん。