沈思

 身体の痛みは人を孤独にする。まさにこの痛みは誰とも共有しえない。痛みからくる吐き気。漠然とした死の恐怖。実存の目覚め。
 そんなときは、ヘッセなのです。

  炎

おまえがつまらぬものの間を踊って行こうと、
おまえの心が憂いに苦しみ傷つこうと、
おまえは日ごとに新しく味わうだろう、
生の炎がおまえの中に燃えているという軌跡を。

我を忘れる喜びの瞬間に酔って
その炎を燃え上がらせ、消えつきさせる者も少なくない
慎重にゆうゆうと自分の運命を
子どもや子孫に伝えるものもある。

だが、陰気な薄明を通ずる道を行くもの、
日々の煩いにたんのうし
生の炎をついぞ感じないものだけは、
その日々を空しく失うのだ。

             Die Flamme

 浪人時代に読んで印象深かった作品のひとつ。